統一教会に一体何が起こっているのか? 著者は、統一教会分裂の現象を長年に亘って観察し、歴史的研究方法によって研究してきた。この本は、膨大な統一教会の一次資料に基づき、統一教会分裂の原因から過程、結果を詳細に記述し、統一教会の未来を見ている。
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2) 第1世代の反発: 統一教会分裂開始-3
創教者の後を引き継ぎ統一教会の宗教的理想を実現しようとした文顯進の試みは、出発初期から曲折を経験したが、文顯進は自分の構想を持続して展開して行った。彼は2002年から2004年にわたって大学生原理研究会(CARP)と二世教育に多く投入した。2001年10月30日、コディアックの世界CARP指導者会議で創教者の裁可を受けて二世中心の7年成長計画を確定した。また「STF(Special Task Force)-CARP-宣教師」と繋がる二世たちの教育基盤の定着に努力し、CARPを世界的な学生組織として育てる為に投資を惜しまなかったという[30]。若い二世指導者の教育に対する文顯進の熱望と目標が創教者の教えと異なるという非難があったが、彼が行った演説を通してその熱望と目標を知ることができる。
2002年2月15日世界CARP総会での基調演説において、「創造主・神様の夢は最も偉大な夢であり、その夢は理想家庭を建設すること」と表明し、自分のアイデンティティを再確認した。そして「その夢とは真の愛を理解して相続し、所有することによって真なる理想家庭を建設することであるが、神様の夢が始まる所は真の愛を学ぶ家庭である」と語った。CARPが突破すべき限界は、「過去6千年間人類を支配してきたサタンの文化、即ち利己主義と自分中心主義に根差した文化」という事実に言及し、「主人意識を持って心情からパラダイムの変化を始めよう」と、CARP会員を説得した[31]。こうした文顯進の主張は、創教者のアイデンティティと統一教会の摂理的伝統と異なっていないが、創教者よりも絶対者・神様を先立てる文顯進の態度すらも創教者に対する不従順として誤解された。
特に新しく出発させたSTFと、文顯進が自発的に創設した純粋な奉仕団体であるSFP(Service For Peace)は、統一教会が創教者の後援に依存してきた他の組織とは異なっていた。創教者の助けや指示を受けることなく統一教会の宗教的理想を実現する為に、創教者ではなく文顯進が自発的に作った奉仕団体であった。ところが、こうした理由から[32]統一教会内ではこうした団体の存在感は減少し、あまり歓迎もされなかった。しかし後日、STFから輩出された二世指導者の高い基準を創教者が認めたようであり、SFPが世界的な活動を成功裏に展開していくと、創教者はSFPを認め[33]、幹部が文顯進と一つにならなければならないと命じた[34]。
2003年当時の文顯進の全活動の目標[35]は、創教者を中心にした統一教会の摂理と歩調を合わせ、創教者が宣布した2013年陰暦1月13日の基元節を成功裏に迎えることであった。今までの資料を網羅して見ると、文顯進は統一教会二世圏の若い指導者の全ての活動と実績を動員して、象徴的な宗教行事ではなく実際に天一国が始まる基元節を準備したように見える[36]。
2004年3月23日に米国会で創教者が主管した「世界平和の王戴冠式」が挙行され、同年5月5日には「後天時代」が宣布されると、文顯進は2004年を整理しながら「統一家が2013年まで天の前に約束した目標を成し遂げる為には完全に新しく出発しなければならない」と主張した。彼は10月3日に講演文集の第1集『心情文化の主人』を発刊して創教者に奉呈し、11月12日には米国モンタナに準備された修練所で自分の意志とビジョンを創教者の前で説明した。11月23日には韓国ソウルの漢南洞公館で受けた創教者の特別な指示に従い、「心情文化創造の主人」という主題で韓国と日本の5大都市[37]を巡回しながら講演した。彼は大型集会だけでなく地域の教会と学舎[38]を直接訪問する中で、統一教会の祝福を受けた信徒に「過去の荷物を全て降ろして、新しく出発すること」を訴えた[39]。文顯進には講演と巡回を通じて指導者全体を抱いて行こうとする意志が明らかに見られた[40]。その日の行事に参加したL氏の言葉によると、「特に彼は日本では特有の話法と親和力で食口たちに力強い感動を伝えながら、次期指導者としての確固たる希望を与えてくれた。この巡回集会の雰囲気は非常な熱気に溢れ、食口たちとCARP大学生、二世は熱狂的に文顯進を歓迎した」という。しかし彼の日本巡回の内容は統一教会の公式資料から探すことはできない[41]。
[30] 文顯進は1992年に大学生の時からU.V.G.(United Vision Group)を創業し、一時は米国で最も成長が速いベスト500の若い企業に選ばれた。
[31] 文顯進,『心情文化の主人』(ソウル: ワールドカープ、2004)246-259頁.
[32]「普通の指導者は父の名前で責任を遂行して、それがうまくできなければ全てをお父様の責任にするが、私はその責任を父の肩ではなく私の肩に全て乗せて、お父様には専ら勝利した実績のみをお返しするだけである」文顯進『神様の夢の実現』ソウル: アジュメディア出版(2011)206頁.
[33]「今日、ここに特別に集まったのは、顯進君の『サービス・フォー・ピース』活動のような、皆さん、本然の姿勢を見つけなければなりません。今まで数十年間統一教会を信じてきましたが、その場で糞尿を垂らして駄目にしてしまいました。大きくなりませんでした。『祝福家庭がどんなに貴重で、これが神様のみ旨であり、真の父母のみ旨であり、宇宙が願う所願成就の一つのパターンである』と思えば、皆さん祝福を受けた家庭はそのまま生きることができますか。家庭自体が『サービス・フォー・ピース』をしなければなりません」『み言葉選集』386巻,163頁.2002.7.16.
[34]「朱東文、はっきり知って行きなさい。(はい)郭錠煥がくっつけたと自分たちが思う時には『郭錠煥が私たちをメチャクチャにしようとしている』と思うかも知れないが、違う。天の特使として息子の代身だから、それで自分と梁昌植と顯進と一つになれということだ。…朱東文、はっきり知って行きなさい。(はい)… お母さんも知りません。お母さんが分かれば、お母さんが復帰させるか・・・お父様に学ばなければなりません。お母さんは絶対信仰•絶対愛•絶対服従しなければなりません。そうであるほど『私は最高に上がって、お母さんを最高に立てる」と言えば、お母さんはあの地獄の底に下らなければなりません。分かりますか。(はい)こんな話は今まで摂理史の秘密ですが、最後の時に全て話してあげるのです。『み言葉選集』393巻,318頁.2002.10.8.
[35] 2003年7月8日に韓国牙山で第1回国際STF総会が開催されたが、文顯進は基調演説で「為に生きること(Living for the great good)、主人意識(ownership)、チームワーク(teamwork)、夢を大きく(dream big)」をSTF会員が備えるべき核心価値として強調した。
[36]「現指導部は基元節を単なる象徴的記念式に転落させ、また他の恩赦祝福を通じて『特別恩赦』を受ける日と言いながら、その真正な意味を毀損しました。…」2013.2.12.祝福中心家庭に捧げる文顯進会長の書信「基元節の真の意味に関して」
[37] 文顯進は2004年11月25日に釜山教区の統一会館大講堂で「これから展開される未来は、世の中との文化戦争であることを強調し、私たちが必ず勝たなければならない。…神様を通じて創造された被造物は真の愛を通じて理想家庭を成した時に最も美しいのであり、真の愛•真の生命•真の血統を備えた実体化理想家庭を成すことがまた神様のみ旨である。この為に絶対信仰•絶対愛•絶対服従の基準を備えること」を強調した。世界基督教統一神霊協会,『統一世界』 2004.12, Vol.406, 205頁.
[38] 大学原理研究会の学生たちが生活する小規模な寮のような所である。
[39] 文顯進のこのような主張は統一教会人には歓迎されたが、見方によっては過去の荷物が即ち第1世代指導者でもあったため、第1世代指導者の立場は統一教会人の立場と違っていたはずである。
[40] 世界基督教統一神霊協会,『統一世界』 2005.1, Vol.407, 55-64頁.
[41] その理由は金慶孝の証言により確認できる。彼は「正に彼の日本巡回の内容がお父様に間違って報告されたようであった。お父様の代身である顯進様をあまりにも目立たせ、権力が顯進様に集中しているという主張が提起されたようであった。2005年初めに急に下されたお父様の決定は、このような報告と無関係ではなかったようである」と述べている。金慶孝,「摂理的葛藤に対する小考(上)」(未発行資料)